「ぁ、海翔!」

「え?」

「これ。さっき、
 自販機で買った」

「ありがと、お兄」



外ではまだ、
雨が音を立てていた。

借りた傘を差して、
あたしは家に帰った。



―――ガチャ



「海翔ぉっ!!」

「碧・・・」

「心配したんだよッ!?」

「うん。ごめん」



抱きついて来た碧と、
心配そうに見る矢崎先輩。

聖生先輩は、
静かに玄関に来た。



「バカ海翔・・・。
 どこ行ってたのさ?」

「病院。奏兄のとこ」

「そっかぁ・・・」

「あ、夕飯作るね。
 碧も一緒に作ろ?」

「作る~っ」



料理が好きなあたし達。

何度も一緒に
作ったことがあって。



「ねぇ碧ー。
 シチューでいい?」

「うん♪んじゃあ、
 野菜切るね~っ♪」



ノリノリで
包丁を手に取る碧。

そんな碧を見て、
あたしは鍋に火をかけた。

聖生先輩は、
何か言いたそうな顔してた。

・・・だけど。

あたしは何も言わなかった。