「海翔。言って」



あたしの目を
真っ直ぐ見て、
そう言った。



「・・・少し、
 熱があるだけ」

「お前・・・、
 熱あんなら休め」

「嫌なの」

「え?」



心配、
するから・・・。



「お兄達に、
 迷惑かけたくない」

「海翔・・・」

「うちね?
 母親いないも同然なの」

「・・・ぇ」



あたしも、
先輩も、
それ以上は
何も言わなかった。

あたしの親は、
昔から、
ずっと仕事で。
帰りも遅い。

親の顔なんて、
全然、覚えてない。
参観日、運動会。
来てくれたこと、
1回もない。

お兄達が、
親代わりだから。

余計な心配は
絶対、掛けたくない。



「行こう?先輩」



立ち止っていた
先輩に、
あたしはそう言った。




「海翔ーっ」

「あ、碧・・・」



校門に、
碧と矢崎先輩。