「ただいま」



玄関に、
見慣れない靴があった。

・・・うそ・・・。



「おかえり、海。
 ちょっと俺の部屋来い」

「も・・・、もう、
 あの人、来てるの・・・?」

「・・・うん。来てる。
 今、兄貴が話してるから。
 ちょっと待ってろ、だってさ」

「・・・そっか」



夜って、言ってたのに。

些細なうそなんか、
どうでもいいけど・・・。



「俺さぁ」

「・・・うん」

「母さんと血縁ないだろ?」

「・・・うん」



お父さんの連れ子だから。
・・・奏兄だけは・・・。



「だから。あんまりさ、
 思ったこととか言えなくて」

「・・・うん」

「けど、今日はさ?
 ・・・言おうと思うんだ」

「え?」



それは、つまり。
本音を全部言う、って?



「俺らを苦しめて来た、
 無責任な母親に、
 全部、言うから・・・」

「・・・大丈夫?」

「ちょっと勇気でないけどさ、
 大事な兄と、
 大事な妹のためなら、大丈夫」



そう言って微笑んだ奏兄。
・・・奏兄は、強いね。

あたしも、頑張らなきゃ。