「海翔はいないのか、って。
 あいつ、結構鋭いよな。
 何かあったのか、
 ケンカでもしたのか、ってさ」

「初磨・・・」

「色々、話してさ。
 初磨のことも、聞いた」



・・・初磨のこと?
って。もしかして・・・。



「手術の・・・、こと?」

「・・・うん。
 再来週だってさ」

「そっか」

「でも初磨、笑ってた。
 笑顔初めて見たよ。
 ちゃんと笑って、
 生きたいって言ってた」



希望を、取り戻してくれた。
・・・叔母さんも、
諦めを捨ててくれたかな?



「再来週、かぁ・・・。
 その日は病院行かなきゃね」

「おう。俺も行くよ」



そして、初磨がしたいこと、
全部全部させてあげるんだ。

――昔、約束したから。



《はつま。びょうきがなおったら、
 いっちばんさいしょになにがしたい?》

《うーん・・・。いちばん?
 いっぱいあってきめられないよ》

《えーっ・・・、わかった!
 びょうきがなおったら、
 したいことぜーんぶしよう??》

《ぜーんぶ?》

《うん!ぜんぶ、ぜんぶ!
 まずがっこうにいくでしょ?
 ともだちもいっぱいつくって、
 いーっぱいあそんで・・・》

《ほんとうにいいのかな?》

《えっ?・・・いいよ!!》

《じゃあやくそく!
 したいことぜんぶしようね》

《うん、やくそく!だから、
 がんばってびょうきなおしてね??》

《・・・うん!!》



この約束があったから、
あたしは希望を捨てなかった。
なのに、初磨が捨てちゃって、
ズルいって、思ったこともある。

学校も行きたがらないで、
病院で入退院を繰り返して。

・・・けど。

やっぱり初磨は大事。
初磨が死ぬなんて有り得ない。
・・・あたしが死なせない。