「出ろよ姉貴」

「うるさい!
 あんた何したの!?」

「聖那ちゃん・・・っ」

「・・・聖那!!」



先輩が怒鳴った。
しかも名前を。



「っ、え・・・」

「・・・聖那。
 もう、出てって」



先輩がそう言うと、
聖那ちゃんは出て行った。



「ごめんな」

「ううん」

「無駄に心配症なんだ。
 小さい頃からずっとさ」



聖那ちゃん、
泣きそうだった。

そんな気がする・・・。



「先輩、なんで聖那って?」

「昔は聖那って呼んでた。
 小3の頃かな。姉貴、は」

「・・・どうして?」



先輩はふっと笑った。



「小3の頃、俺さ、
 記憶失ったんだよね」

「えっ」

「姉貴に突き飛ばされて。
 ・・・事故に遭ったんだ」



聖那ちゃんに・・・?



「記憶は戻ったんだけど。
 失ってからは、
 姉貴って呼んでたんだ。
 だから、そのまま・・・。
 それ以来。聖那って
 呼ぶと、あんな顔するんだ」



驚いたような、
泣きそうな、
聖那ちゃんの顔。

・・・あの顔は、
あまりにも悲しい。