「・・・そっか」



溢れる涙を拭って、
先輩はあたしを抱きしめた。

強く。でも、優しく。



「先輩・・・」

「もう言わなくていい。
 辛いよな。ありがとな」



お母さんのためじゃない。
・・・この涙は。



「大嫌い・・・。
 ・・・あんな人」

「うん。分かった。
 分かったから・・・」



先輩に抱きしめられると、
・・・安心する。

そのせいで、
また涙が溢れた。



「・・・落ち着いた?」

「うん。ありがとう」



―――コンコンッ



「開けてー」

「ぁ、はいはい」



ドアを開けると、
紅茶を持った聖那ちゃん。



「はいっ」

「ありがと」

「海翔!?えっ?
 どうしたの!?」



あたしの腫れた目を
見て、そう言った。



「あっ、おい!
 勝手に入んなよ」

「聖生に何されたの!?」

「何もされてないよ」

「じゃあなんで・・・!!」



こんなに心配してくれる。
・・・家族みたいだね。