「・・・お母さんが、
 帰って来るんです」

「え?」

「碧と似てるんです。
 お母さんはいつも
 仕事優先の人でした」



碧の場合は、逆。

お母さんと
血が繋がってなくて、
お父さんは、
仕事優先の人。

・・・あたし達、
似てないようで
本当はすごく似てる。

だから、
仲良いのかな。



「なるほどね。
 だから、
 そんな顔してんだ」

「でもあたし、
 ちゃんと会いますよ」

「へぇ、偉いじゃん」
 
「とりあえず今は、
 あたし、帰るんで」



そう言って、
歩き出した時。



「聖生呼んどく。
 玄関にいろよ?」



そう微笑んだ先輩は、
ちょっとだけ、
格好よく見えてしまった。

碧が好きになったのも、
若干分かる気がする。



―――ガラッ

「海ちん呼ばれてたねぇ~」

「まぁね。
 あたし帰るから」



鞄を手に取って、
碧にそう言った。



「え?うっそー。
 今日遊びたかったのにぃ」

「ごめん。今度にしよ。
 帰って来るっぽいんだよね」

「・・・え」



碧から、
笑顔が消えた。