『海ちゃん・・・』

「呼ばないで。
 その名前で呼ばないで!」



職員室にいた先生達が、
一斉にあたしに目を向けた。



『ごめんね。
 隼翔には今、
 電話したんだけど。
 お母さん、
 今日の夜、帰るから』

「え?」

『ちょっと、
 色々あってね。
 それだけだから・・・』



何も言えずにいた。

電話が切れてからも、
足に力が入らなくて、
その場にしゃがみこんだ。



「新垣?どうしたんだ」

「・・・別に、何も。
 あたし、今日早退する」

「何?駄目だ。
 授業に出なさい」

「早退します」



家に帰りたい。

なんで今日なの?
先輩と結ばれて、
幸せなのに・・・。

なんで、
こんな日に、
帰って来るの。



「海翔?」

「矢崎先輩・・・」

「どうしたんだよ?」

「え・・・?」



あれ。あたし、
どんな顔してる?



「話してみ?
 楽になるから」

「でも矢崎先輩、
 碧の彼氏でしょ?」

「関係ねぇよ」



若干戸惑いながらも、
少しずつ話し始めた。