「千晴は親を知らない。
 ・・・そして、
 両親が死んだのは、
 自分のせいだと思ってる」



え・・・?



「どうして・・・?」

「自分が産まれたから、
 お母さんが死んだ。
 自分が産まれたから、
 お父さんが死んだ。
 昔の千晴の、
 口癖みたいなものだった」



口癖、って・・・。

違うと、思う。
お母さんはきっと、
後悔なんてしてない。
お父さんはきっと、
何よりも嬉しかった。

亡くなったのは、
千晴のせいじゃない。

あたしは、
愛情を受けてないから、
本当のことは分からない。

だけど、そう信じたい。



「あたしが何を言ってもね、
 千晴、自分のせいだって
 何度も何度も謝るの。
 俺が産まれてこなければ
 みんな幸せだったのに、
 って・・・。謝るの・・・」



美影の声が、
微かに震えていた。



「そう・・・」

「クリスマス、だよ?」

「・・・え?」

「千晴が産まれたのは、
 12月25日。
 みんな幸せなはずの、
 クリスマス・・・」



震えた美影の声。

あたしも、
泣きそうになった。

幸せなクリスマス、
千晴達姉弟は、
何年分もの不幸。

そんなの、
辛すぎるよ・・・。