「じゃ、今でいい?
 休み時間は用事があるの」

「図書室・・・」



美影が歩き始め、
あたしは後に続いた。



―――ガラッ



「けほっ・・・。
 ほこりっぽいな」



思わず、咳き込んだ。
普段使ってないだけあって、
かなりのほこりっぽさ。



「・・・親がいないの」

「え?」

「両親とも死んだ。
 千晴が、産まれた日に」

「ぇ・・・」



千晴が、
産まれた日・・・?



「詳しく聞かせて」

「お母さんは身体が弱くて、
 あたしを産んだ後、
 千晴を授かったのは、
 限りなく奇跡に近かった」



何も言わなかった。

・・・というより、
何を言っていいのか、
分からなかった・・・。



「お父さんは、
 千晴が産まれて、
 病院に向かう途中、
 事故に遭って死んだ。
 そして、同時に」



美影が一度、
言葉を止めた。

何があったのか、
少し、予想ができた。



「お母さんの、
 体力が持たなかった」



それは、つまり。

お母さんも、
お父さんも、
亡くなった・・・。