「やっと呼んでくれましたね」



予想外だった。
千晴が笑ってたから。

でもなんとなく、
切なげに笑ってる気がした。



「千晴・・・」

「ねぇ、先輩」

「・・・え?」

「俺を見てよ・・・」



いつも敬語だったのに。

腕をつかむ力を、
少しだけ強めた千晴。

・・・ごめんね。



「ごめん。
 帰ろっか。ね?」

「・・・。はい。
 先輩家どこですか?」



いつもの千晴だった。

あたしなんて、
やめればいいのに。



「ね、先輩」

「ん?」

「メアド、
 教えてください」

「・・・いいけど」



紙に書いて、
千晴に渡した。

・・・って。

なんで教えてんだろ。



「メールしますね。
 じゃっ、また明日!」



いつの間にか、
家の前にいて。



「あ、うん」



千晴は、
手を振りながら
走り去っていった。