俺は千比絽が着替えるのを待ち、そっと後ろからを抱き締めた。


もう泣くなよ。


今の俺にはこんな事しかしてやれない。


好きな女の為に俺は何も出来ないのだ。


庄一が沙那美に振られてやけになってる事は、沙那美からの電話で分かっていた。


【私はやっぱ弘也でないと駄目なの。お願いだからもう一度私とやり直してほしい。】


俺の答えは決まっていた。


《俺はもうおまえとやり直すつもりはない。俺は始めて自分から好きだと思える女が出来た。でも、その女とは付き合うつもりはない。今の俺は野球だけだから、沙那美はもう俺の事は忘れて新しい恋をした方がいい。》


沙那美は泣いて、絶対諦めないと言っていたが。


俺なんかに執着する必要はないだろ。


沙那美には好きな男と幸せになってほしいと、願ってる。


庄一にも早く立ち直って、野球に専念してほしいと思う。


庄一と野球がしたいんだよ。


庄一がどんなに俺を嫌っても、俺にとってお前は永遠のライバルだから。