小山主将が西條先輩に怒鳴った。


小山主将はどうして、西條先輩を目の敵みたいに言うのだろ。

「西條おまえに言われなくても、そんな事分かってるよ。おまえは一々煩いんだよ。」


ざわついていたみんなが、静かになる。


「今から先発メーバーを発表する。ピッチャーは西條、ファ−スト落合、セカンド、中村、サード小山、小山の文句は後で聞くからな。」


佐川監督が守備メンバーの発表を続けた。


小山主将が佐伯監督を睨んでるけど、最後迄佐伯監督の話を聞くべきだと思う。


「どうしてピッチャーが西條なんですか。大事な試合なのに、俺では勝てないと言う事ですか。」


佐川監督が腕を組み直すと、小山主将を見据えて言った。


みんなが佐伯監督のことばに集中すると。


「今のおまえがピッチャーだと、このチームは勝てない。西條より小山の方がピッチャーには向いてるが、おまえじゃ駄目だ。どうしてか分かるか。」


小山主将はうつ向いたまま。


「分かりません。」


佐伯監督は小山主将から視線をはずして、話を続けた。


小山主将がうつ向いたまま、膝の上で握られた手が震えているのが分かる。


「分からないならそれでいい。ピッチャーは西條で行く。ピッチャー控えは陸斗。千比絽は西條と組んで練習をしろ。いいか今名前を呼ばれなかった奴も、気持ちを一緒に戦うんだ。」


小山主将が部屋から出て行った。


泣いていたのかも知れない。


心配たが、後を追う事をためらった。


小山主将の辛さが痛いほど分かっていたから。


今はそっとして置くべきだと思った。