優しいはずの陸斗の様子がいつもと違う。


どうして、私の見方してくれないの。


後で覚えて置きなさい。


「主将の小山が千比絽を説得しろ。」


小山主将がチラリと私を見る。



「え、俺がですか。」


佐川監督のことばに慌ててるのは、江南高校野球部主将の小山庄一。


みんなが部室を出て行き、部室には小山主将と二人きりになってしまった。


かなり、気まずいです。


「工藤。」


「いえ、千比絽でいいです。」


工藤が二人だと分かりづらいから、名前で呼んで貰った方がいい。


「毎日の練習はきついし、休みなんかない。男の俺たちだって毎日クタクタだ。千比絽は女らしい部活に入った方が良いと思う。」


女らしいに、カチンと来た。


小山主将は私の事を何も知らない癖に、分かったような事は言わないでほしい。



「女らしいってなんですか。私は3才の時から野球をしています。入部させて下さい。」


床に頭を擦りつけてお願いした。


野球がしたい、ただそれだけなんです。


このまま諦める訳にはいかない。


今日どんな事をしても入部を認めて貰うつもりでいたから、こんな事に負けてたまるか。


主将までため息をつかないでください。


この思いをどうすれば分かってもらえるのかと、ない頭で必死に考えた。


目も合わせないで坦々と他人事のように話続けてる、小山主将は苦手だと思えてしまう。