父親の血を受け継いだ千比絽は、みるみるうちに野球が上達した。


千比絽と一緒に入った少年野球では、あっと言う間に千比絽は有名選手になってしまう。


いつも妹と比べられるのが嫌だった。


「陸斗の妹って凄いよな。親父がプロの選手だけあって上手いよ。」


みんなが妹ばかり誉めるから、俺は直ぐに少年野球を止めた。


俺はもう野球を絶対しないと心に決めたが、母から父親の命がもう長くないと聞かされた時、もう一度野球をやることを決心した。


俺が親父の意志を継ぎプロ野球選手になること伝えると、親父が泣いて喜んだ事を今も覚えている。


「千比絽を頼む。あいつは直ぐに暴走するから陸斗が止めてくれよ。千比絽が男だったらどんなに良かったかと思う。」


千比絽が男であってほしかった。


千比絽には野球の素質があると、誰もが認めている。


今も千比絽が恨ましくてたまらない。


本当に千比絽になりたいと思う。


俺ももっと頑張るべきだな。


千比絽を見習って、がむしゃらにやってみますか。