小山主将には西條先輩が熱出して寝ていると伝えると、後で様子を見に行くと言う。


西條先輩が苦しんでいる姿が頭から離れない。


駄目だ。


このままだと野球に集中出来ない。


「千比絽、どうした。もうねを上げたのか、珍しいな。」


本当に、今日の私はどうかしてる。


野球どころでなくて、西條先輩の事だけを思っていた。


「すみません、体が思うようについて行けなくて。」


「もしかしてあれの日?」



小山主将、それって、セクハラですから。


絶対、面白がって言ってる。


「違います、寝不足です。本当にすみません。」


西條先輩が気になるとは言えない。


小山主将だけにはこの気持ちを知られたくなかった。


「誰にもあるさ、無理する事はない。弘也の様子をみてきたけど、あいつも寝不足で風邪ひいたらしい。もう熱も下がり元気だったよ。」


本当に風邪だろうか。


小山主将何か隠してる。


やな、予感がしてならない。


西條先輩が死んでしまうんじゃないかって、本気でそう思った。


父さんの時と同じように、西條先輩が消えてしまいそうな気がする。


どうして、私に本当の事を話してくれないのだろう。


こんなに西條先輩の近くにいるのに、どうして、遠く感じてしまうのか。