「瀬良さん?」
黙り込んだままの僕に、
彼女が心配そうに
声をかけた。
急に名前で呼ばれたコトに
驚き、僕は思わず彼女の目を見つめた。
見つめる僕に、彼女の目が優しく笑いかけた。
「瀬良さんは
優しいんですね。
でも‥、
そういう顔は
しないで下さい‥」
「えっ…!?」
彼女に言われ、僕はその時初めて気付いた。
彼女の話を聞きながら、
いつの間にか
『彼女と同じ顔』を
していたんだと‥。
そう気付いた瞬間、
すごく 恥ずかしくなった。
悲しい顔を
していた自分が‥
じゃなくて、
彼女に
心配された自分が‥
恥ずかしくて
すごく 情けなかった。
そう思うと、
何も言葉が出なかった。
何も言えずに、
僕は ただ、
彼女から視線をそらした。
「ねぇ、瀬良さん。
さっき描いてた絵、
見せてもらっても
いいですか?」
突然、彼女は話題を
切り替えた。
##### きっと、僕に #####
###### 気を遣って ######
#### くれたんだろう ####
僕はこれ以上彼女に
心配されないように、
「うん、いいよ」
と、笑って頷き、
「でも、ちゃんと描いた
やつじゃないから‥」
と、前置きしてから、
隣のイスに置いたバッグからスケッチブックを取り出し、彼女に渡した。
「ありがとうございます」
受け取りながら、
彼女は嬉しそうに
僕に笑ってくれた。
僕にとってその笑顔は、
まさに‥
##### 天使の微笑み #####
#### そのものだった ####