病院に着くと、
玄関前に一人の女性が
立っていた。

その女性は足早に
僕の方へと歩み寄ると



「瀬良さん‥ですね?」



と、僕に訊いた。



「‥‥はい」



肩で息を切らしながら、
僕はかすれた声で答えた。



「私‥、莉緒の母です‥」



涙でうるむ目で、
その人は優しく笑った。

その顔が、紛れも無く
彼女の母親であることを
告げていた。





「ごめんなさいね‥。
突然のことで…」


「いえ…。
彼女の‥病室は‥?」


「3階の‥、
305号室です‥」



静かな口調でそういうと、彼女の母親は僕を促すように、中へと入って行った。


母親の後を追うように、
僕はそのまま彼女の病室へと向かった。