「お待たせ」

「すいません‥、
ありがとうございます」

「なんか、急にガスが
止まったらしくて‥、
それで 遅くなったみたい」

「そうだったんですか‥」


そう会話しながら、
僕はトレーをテーブルに
置き、彼女にオムライスとスプーンを渡した。

「ありがとうございます‥」

受け取ろうとした
彼女の手が、
少しだけ僕の手に触れた。


「あっ…!?」


触れた瞬間、
僕たちは思わずお互いの
顔を見た。


彼女と目が合い、
僕は自分の心臓が

ドクンっ…!!

と、
大きく脈打つのを感じ、


「あっ‥ごめん…!」


と、すぐに お皿から手を離し、視線をそらした。


「えっ‥、いえ…」


彼女も少し恥ずかしそうに視線をそらすと、
ゆっくりとお皿を
テーブルの上に置いた。


「た‥食べようか。
おなか‥、
空いちゃったし‥」


「そう‥ですね。
私も‥
おなか、空いちゃった‥」


お互いに、
どこか たどたどしい言葉を交わし、
僕はイスに座った。


そして、
お互いに

『いただきます』

と 手を合わせ、


僕たちはようやく

『お昼の時間』

になった。