私は真っ白な紙を抱えたまま
教室へと引き返した。


席に着き冷静に考える。

“近づかない方がいい”

“俺と麻里亜…”

“邪魔だった…”

誠と麻里亜ちゃん
もしかして――…。


『ねぇさ~何で麻里亜って
あんなに明るかったのに
今はクラスで孤立してるんだろうね?』


近くでヒソヒソ話をする
女子の会話が耳に入ってきた。

『分かんないな~。けど麻里亜
誠と別れてからだよねー』


やっぱり…
麻里亜ちゃんと誠は
付き合ってたんだ!


さっきの葵ちゃんの話…

自分的にまとめるとこうなる。
葵ちゃんは誠が好きだった。
けど誠には麻里亜ちゃんが
いたから葵ちゃんは麻里亜ちゃん
に何かした――…。


単純な様だけど……
なんかドラマみたいで
実際こんな事があるんだ…と考える。


けれどあくまでこれは自分の
考えであって…
しょうがないけど聞いて
確かめるしかない。


もしそうなら麻里亜ちゃんは
すごいかわいそうだよ。

誠と別れてて…
クラスでも一人だなんて。


誠達の過去を確かめるべく
聞き出すことにする。

正直なんで自分があの3人の
問題に首を突っ込んでるのかは
よく分からないけど……。


何でだろう…
麻里亜ちゃん見てたら
かわいそうになってきて
放っておけなくなっちゃう。


さすがに葵ちゃんには
過去のことは聞けない。

誠に聞いたとして喋ってくれるか…

誠達と同じ学校の人に聞きたいけど
見ず知らずのうちが聞き出しても
変に思われるだけ。

しょうがないけど……
ストレートに麻里亜ちゃんに
聞き出すしかないな!!


学校中に下校のチャイムが鳴り響いた。

う~ん。
麻里亜ちゃんに話かけにくいな。
あぁ…麻里亜ちゃんのいうこと
すぐ信じてればよかった。

そうだよね。
葵ちゃんみたいな可愛いくて
感じ良さそうな子が私なんかと
友達になりたがるハズがないよね。


はー、本当に私って馬鹿。

校門で麻里亜ちゃんを
待ちながら一人で落ち込んでいた。

『キャーやめてやめて!』

聞き覚えのある声がこちらに
向かって走ってきた。

よく見ると…
葵ちゃん?



あっ葵ちゃんだ!!
誰か知らない女子に追いかけられて
走っていた。

『待ちな!葵!!』

その二人はやっていることは
小学生みたいだけど
凄く楽しそうだった。

やっぱり葵ちゃんには
友達がいて私に近づいたのは
誠に近づくためだったのかな?


ううっ……葵ちゃん。
なんか悲しくなってきた。

ドーーーン!!!!!

そして私に追い討ちをかける様に
葵ちゃんは私に思いきりぶつかり
なにも言わずにそのまま行ってしまった。

『うう…そんなぁ』
鞄をギュっと両手で握りしめ
去っていく葵ちゃんを見つめる。


やっぱり私は...
私は葵ちゃんにとって
ただの道具でしかないのか。

呆然と立ちつくすしかなかった。


トントン

誰かに肩を叩かれ振り向くと
そこには麻里亜ちゃんがいた。

『よかったー
有紀ちゃん探してたんだよー』

『えっ??』
私も麻里亜ちゃん待ってたんだけど…

『言っとくけど有紀さんが
私のいうこと信じてくれるまで
説得するからね!』

麻里亜ちゃん。
私のこと心配して....

この人は本当に優しい人なんだ。

この瞬間私は麻里亜ちゃんの
いうことすべてを信じよう
と決意した。


『あのね...私、麻里亜ちゃんのこと信じてっ』

『おっ?
ゆきじゃん~』

言いかけた時耳障りな声が
飛び込んできた。

その声の主は…


げっ!今朝のギャル男!
確か名前が、え~っと
思い出せない。

『ちょっと慎二!
邪魔しないでよねー
しっしあっち行って』

と麻里亜ちゃんが
ギャル男に対して言う。

あっ慎二か。
思い出した。

麻里亜ちゃんもやっぱり
誠達と同じ中学校のため
この人のこと知ってる様だ。

『なんで俺がお前に言われなきゃ
なんねーんだよぉ』

慎二は口を尖らせ...



ガバっ!!

えっえええええ!?

ギャル男は後ろから私に抱きつき
『俺...こんな可愛いごちそう
逃がす程優しくないからさ』


ご、ごちそうですと!?

『また出た、慎二の悪い癖。
もういいから早く有紀ちゃん放して!』


『ちょっと!!私ごちそうじゃないし
アンタなんかと関わるつもりなんて
一切ないから!!』

慎二の手を振りほどきたくても
……出来ない!

すごい細くてちゃらちゃらしてるくせに
なんなのこの力は....。


『どんなにあがいたって無駄だよ
ゆーきちゃん♪』

慎二は笑顔でそういうと
そのまま私を連れて行ってしまう。

『ちょっと!慎二!
もう~ごめんね!有紀ちゃん
慎二こうなったら止まんないから
付き合ってあげて!』

麻里亜ちゃんは私に叫んだ。

『えええっ!!ちょちょっ』

『有紀ちゃん話はまた明日学校でするから~!』

なんでーっ!
せっかく麻里亜ちゃんのこと
信じ始めてたのに....!

『じゃ、ゆき!
駅前のカラオケ行こうかっ』

…と慎二はまたニコっと笑う。

これ以上こいつに抵抗しても
無駄だと思い渋々こいつに
ついて行った。