「ったくよぉ。
で、こいつはまだ起きねーの?」


「もうすぐですよ。
さっき、うわごとも言ってましたし。」



絶妙なタイミングで看護師が口を開く。



「チカヤって、呼んでましたよ。」


「マジ!?」



うそっと健は誓耶を振り向く。



「あ、ほら。」



言われて、誓耶と健は偉槻を見た。



「ち…か…や…。」



掠れてよく聞き取れないが、確かに誓耶を呼んでいる。



健はぱあっと顔を輝かせた。



茉理子はもう、何も言わない。



ただ、ベッドの反対側で突っ立っている。



健はパイプ椅子を引っ張ってきて、腰かけた。



「ほら、誓耶も座れ。
手、握ってやんな。」



恐る恐る、誓耶は偉槻の手を取った。



さっきと変わらず、温かい。



よかった、偉槻。



ぎゅっと握るが、握り返してはこない。



寂しいな。



いつもなら、あたしより強い力で握り返してくれるのに。



あ、いつもってだいぶ前だけど…。