座ったままぼんやり考えていると、さっきの看護師がやってきた。



「いいの?」



主語がなくても、なにを問われているのかわかる。



誓耶は弱々しく笑った。



「きっとあたし、行っちゃいけないから。」



看護師は不審そうに首を傾げ、ふとあたりをきょろきょろと見渡し、誓耶の前に屈んだ。



「大事な人なんでしょ?」



その諭すような声に、また涙が溢れた。



もう、全部吐き出したかった。



「別れようって言われたんだ、嫌いになったからって。
で、たぶんもう彼女が出来てて、今先に行った。
あたし、行ったらまた偉槻に邪魔だって言われる…!」



思っていたよりも重い現状に、彼女は驚いたようだったが、少し考えて強い口調で言った。



「でも、好きなんでしょ?
会いたいんでしょ?
今行かなかったら、今度会いに来るの?」



このまま別れるなんて、後悔しない?



彼女の質問に頷くことができなかった。



ほらやっぱり、と呆れて笑って、彼女は腕を引く。



「今は看護師じゃなくって、おねえさんとして貴方に説教してあげる。
そんな未練があるなら、彼に会ってからこれからどうするか決めなさい。」


「うん。」



会いたい。



やっぱりこのまま別れて偉槻がどうなったかを知れないなんて嫌だ。