偉槻の煙の臭いが、漂う。



「もう、帰れ。」


「やだよ。
あたし、なんでか聞きたい。」


「俺の勝手。
…ほら、また目ぇつけられるから。」


「それでもあたしは偉槻といたい。」



背中を向けた偉槻の身体が強張った気がした。



「…帰れ。」



拒絶。



話すら、してもらえない。



誓耶はうっすらと涙で視界が歪むのを感じた。



「もう、変わんないわけ?」


「ああ。」


「そっか…。」



駄目、なんだ。



駄目だ、止まれ、あたしの涙。



我慢しようと頑張ったが、涙はせりあがってくる。



誓耶は慌てて駆け出した。



完璧に偉槻の目に届かないところまできたとき、とうとう涙が決壊した。



終わり、だって。



あたし、もう偉槻に嫌われたんだって。



でも、どうしてかわからない。



納得できない。



でも、偉槻が嫌がって話さない。



どうしたらいいの?