偉槻は何も答えなかった。



「聞いてんの?」


「ああ。」


「どうして?」



また答えない。



誓耶は息を切らせて偉槻を睨んだ。



「心配しただろ、何かあったのかと思った。」


「なんもねぇよ。」


「じゃ、なんで?」


「ちょっとこっち来い。」



唐突に手首を掴まれ、引っ張られる。



暖簾をくぐった偉槻は裏口まで足を運んだ。



「何?」


「別れろ。」


「は?」



一気に血の気が引いた。



別れろ?



偉槻は険しい顔だ。



冗談じゃないらしい。



「…なんで?」


「俺が嫌になった。」


「嫌?」


「ああ。」



偉槻は決して視線を合わせようとしない。



誓耶はじっと偉槻を見つめた。



待て、落ち着けあたし。