偉槻のアパートへの道はもう完璧に覚えている。



偉槻、いてくれよ!



息を切らせて階段を上り、乱暴にドアをノックする。



しばらく待ったが、返事はない。



いないのか?



ドアにぺたりと耳を押し当てるも、物音はなかった。



店だ!



夕方5時過ぎ。



ちょうど店が開く頃だ。



誓耶はすぐさま居酒屋に向かった。



遠くなくて、助かった。



駆けこむようにして乱暴にドアを開けると、カランカランとベルが忙しく鳴った。



「ありゃ、誓耶ちゃん、どうしたの?」



田中が誓耶を見て、目を丸くする。



誓耶は急きこむように尋ねた。



「偉槻は?」


「あ、奥だけど…。
ちょっと行かない方が…。」


「なんでだよ!?」



不機嫌に問い詰めると、田中は投げやりに「じゃ、行ってみな。」と言った。



行くよ、と吐き捨て、誓耶は足音も荒く、厨房に向かう。



「お邪魔します。」



一応声をかけて覗くと、中には数人の従業員と店長がいた。



「店長。」


「あ、嬢ちゃん。」