桜井亜紀が山本茜の知り合いとは限らないと考えた中川は、食堂でも調査を試みることにした。

念のため、トイレへ行き、スーツに着替え、黒縁めがねをして変装することにした。


食堂を見回してみると、奥の方に20代後半と思われる女性が一人で昼ご飯を食べているのを発見した。少し気が強そうに見えたので、あまり親密な関係を築かずに直球で聞くことに決めた。

「すいません、ちょっとお時間よろしいでしょうか」

「ええ、まあはい」
その女性は渋々と応じた。

「正直にお答えください。この女性をご存知でしょうか」
山本茜の写真を取りだし尋ねた。

「山本茜さんですか。知り合いですよ。どうかしたんですか」

「はい。詳しくはお話できないんですが、この方に関して知っていることを教えてください」

「あなた、何者なんですか」

「警察です。このことに関しては一切口外しないでください」
そういうと、事務所で受け取った佐藤英一名義の警察手帳を差し出した。探偵ではいくつ名前があっても足りはしない。

「わかりました。ではお話しますね」