「さっきアキの名前出したのは
お前をからかっただけだよ。

……ってえっ?ちょっと待てよ
俺ら明日は行かなくてもいいって
言われてなかったっけ?」

「あぁ、最初の予定ではそうだったけど
どっかのバカのスキャンダルのせいで
明日ミーティングだとよ。
さっきあの女から電話あった」


……全く勘弁しろよな、ケン。


「あ〜〜そうだそうだ。
俺昼間あの女にメールしといたんだよね
“結婚しまーす(ハート)”って。
アイツなんか言ってた?」

「とりあえずそんなの聞いてないって
めちゃくちゃ怒ってたけど
まあ何とかなんだろ」

「悪いなリーダー
お世話になります」

「気持ち悪いからよせよ。
お前のフォローなんか
今まで散々やりつくしてきたから
別にこれぐらいたいしたことない」


そうして煙草を手に取る俺を見て
ケンがちょっと嫌な笑顔を見せる。

こういう顔をする時のこいつは
ろくでもない事を
企んでる場合が多いから
少し警戒すると、案の定――


「そういやあさっき
明日の予定の話の流れで
お前がキッチンに行った隙に
アキに聞いてみたんだよね〜、

“イベントに応募するくらいだから
お前もDown Setのファンなわけ?”って。
アイツ何て言ったと思う?」

「知らね」


余計な事をと思いながらも
平然を装って

煙とともにそう吐き捨てると
ケンはこれ以上楽しい事はないっていう
至福ながらも黒い表情。


「“そんな訳ないじゃん、
私あいつらの音
っていうかボーカルが大っ嫌いだし”
だってよ!」

「ふーん。
……ってはぁ!?
テメエ今なんつった?」


――――――