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「あーあ、今年の夏は
こうして何もしないで終ってく。
こうなりゃ明日アキ誘って
海水浴でも行こうかな」


飲み始めて早三時間強
ケンはフェスのラストを締め括った
花火の映像を見ながら
深々とため息をついた。


その隣ではアキが
ソファにもたれかかりながら
静かに寝息を立ててる。

きっとまだ身体も本調子じゃないし
精神的にも色々と疲れてるんだろう。


彼女の細い肩に
薄手のタオルケットをかけながら


「何でアキ誘うんだよ?
里沙連れてけよ。
それに海じゃなく
もっと胎教にいいとこ」

「えーだってさ、里沙早速実家に帰って
子供出来た事親に報告するから
二三日泊まってくるって
行っちまったからさ。

俺も行くって言ったのに
“あんたがいたんじゃ
上手くいく物もいかなくなるから
来なくていい。
私に全部任しといて!”だってよ」

「ははっ!
里沙らしいな、正しい判断だ」

「笑い事じゃねーよ!
結婚前からシリにしかれるなんて
マジ勘弁しろ」

「今からあがいても手遅れだろ。
お前は付き合い始めた頃から
すでに里沙にシリにしかれてたしな」

「……ハン!言ってろ!
お前もアキに
振り回されまくってんだろ」

「あ?
振り回されてなんかねーよ」


かなり心外な指摘にムカついて
ケンに向かって空の枝豆を投げ付けると

彼はさして気にした様子もなく
「どうだかねえ」と呟いて
缶ビールを飲み干した。


「まさか噂のアキちゃんが
これほどまで美少女だと思わなかったしー。
お前よく同じ部屋に住めるな
ムラムラしたりしねーの?」

「……んなわけねーだろうが、
こんなガキ別にどってことねーよ」

「ヘーェ」


そうは言いながらも
こいつは俺らの事情を
全て知ってるからバツが悪い。

だからあえて話題をそらそうと


「――海行くっとかってテメエ、
まさか明日の予定
忘れた訳じゃねーだろうな。

それにアキも予定あるって
さっき言ってただろうが」