そうしてケンは
ソファに向かってダイビングして
画面に向かって雄叫びを上げてる。


その切り替えの早さに若干付いていけず
ユウと二人キッチンの横に立ったまま
ケンの姿を眺めていると


「だから言ったろ?
ケンなら心配する事ないって。
アイツの脳みそは鳥なみだから
三秒前の事もすぐ忘れちまう。

お前の事気を使って
忘れたフリしてる訳じゃねーぞ
本当に忘れてるんだから
ある意味スゲー奴だよな」

「……アイツ
彼女にプロポーズしたんだって」

「ああ、今のケンの顔見てたら
そんなの誰にだってわかる」

「そうだね。
凄い幸せそうだった」

「おう」

「子供もきっと
幸せになれるよね?」

「当然だろ」

「うん。
――何でかさ、彼が凄く
うらやましくなってきた。

過去を引きずらないで生きられるって
私には絶対出来ないことだから」

「……俺もそう思う」


そう私の言葉を肯定したユウに
“どっちの事が?”
って聞き返そうとしたけど

ちらりと見たユウの顔が
余りにせつなそうだったから
これ以上
何も聞く事が出来なかった。

――すると


「でも過去があるから
今があるんだ。
誰でもな」


――私も、そう思う。