エアコンがつけっぱなしの部屋は
温度が下がりすぎて少し肌寒い。

でも高ぶった感情を
静めるのには調度よくて

私は部屋の奥に進むと
ベッドに横にならずに
ギターのそばの床にペタリと座り込んだ。


間違ったことは
多分言ってない。

でもあんな風に
他人を責める権利なんかない。


自分とお腹の中にいる子供を
無意識に重ねて
あの男に自分の怨みをぶつけただけだ。


やっぱり私は
自分の母親を許せそうにない――。

きっと一生。


胸が苦しくなって
立てた膝を両手で抱え込むと
寝室のドアが数回叩かれる。


「アキ?」


何も返事が出来ないまま数秒。

するとすぐにドアが開いて
私の背後でベッドに
ドサリと座り込む気配がした。


「……ねえ、」

「何?」

「お願いだから写真返して。
やっぱりこんなのおかしいよ。
こんな生活堪えられない」

「………」


――沈黙がしばらく続いて
耐え切れなくなって
まだ声を出そうとすると
それに被さるようなユウの低い声。


「……ケンはさ」

「えっ?」

「ケンは大丈夫だよ。
ちゃんと色々わかってる。

あいつ女にだらし無いし
バカでアホで仕方ないけど
あいつら中学から付き合ってて
ケンはずっと
里沙をちゃんと大切にしてるし。

だから彼女も、あと子供も
放り投げるような真似は絶対にしない。
自分の生涯かけて
二人を守って愛しぬく事が出来る奴だ」