身体がいきなり自由になった
私の目の前には

頬と横っ腹を摩りながら
床に寝転ぶケンと
冷めた目つきで彼を見下ろすユウの姿。


「痛ッー
何だよ、冗談に決まってんだろが。
拳と蹴り、両方入れるなんて
酷すぎねえ?」

「お前の場合
冗談になんねーだろが。
なんなら里沙にお前の女関係
洗いざらし話してもかまわねえんだぞ」

「わーったわーった、
悪かったって
もうしねーから。
今このタイミングでそんな事やられたら
しゃれになんねーから」


そう言って顔をしかめたケンを一瞥すると
ユウはさっきから左手に持った
昨日買ったばかりのマグカップを
私に向かって差し出した。


「ほらアキ、オレンジジュース。
飲めんだろ?」

「ウン
ありがとう」

「あとケガしたとこ
また消毒すっからソファー座れ」

「わかった」


そうしてユウの背中の後についていく
私たち二人を交互に見て
ケンはニヤニヤ笑いながら
「へぇ」と面白そうに呟くと

ユウはわざとらしく彼の足を蹴っ飛ばして
ソファーの方に歩いて行った。


……?


そんな二人のやり取りの
意図する事は意味不明だったけど
仲がいいんだろうなって事はよくわかった。