洗面所にあったドライヤーを借りて
きちんと髪を乾かしてから
リビングへのドアを開けると

部屋の奥から
ユウの物とは違う男の声が聞こえて
驚いて足を止める。


するとすぐに


「あ〜やっと来た!
お前が噂のアキちゃんね。
お邪魔してマース!」


とリビングの床のガラステーブルの側に
あぐらをかいて座りながら
こちらに手を振るガラの悪い男。


……だ、誰?


びっくりして
ドアノブに手をかけたまま
大きく目を見開き
不審人物を凝視してると
その男が目の前まで近づいてきた。


金髪坊主に耳にはピアス多数
タンクトップを着た肩には
梵字をモチーフとした赤一色のタトゥー。

こちらをジロジロ見下ろす大きな目は
人懐っこそうだけど
どこか鋭さをもってる。

言うなればエレベーターで
二人きりで乗り合わせたくない
タイプの人物。


そいつは私の警戒心など
全く感じてない様子で


「何だよ、めちゃめちゃ美少女じゃん。
ラッキー!
俺塚本 健(ケン)ね。
ケンでもケンちゃんでも
ツカちゃんでも好きなように呼んで。

ここで会ったのも何かの縁だし
記念にハイ、いただきマース!」


と高らかに宣言した後
私の両肩をガッチリ掴んで
顔を近づけてきた。


は!?何なのコイツ!
有り得ない!


慌てて手を振りほどこうとしたのに
力が強くて微動だにしなくて
顔を背けながらも
蹴っ飛ばそうと左足をあげかけたとき――


ガッ!ドカッ!!


「ぐぁぁ!ッッテエ!」