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アキが風呂に行って
やがてシャワーの水音が
ひそかに聞こえてきてやっと
我に返ったように寝室の奥に進んだ。


まさかアイツに
あんな事言われるなんてな。


一瞬心がざわついたけど
ポーカーフェイスは得意中の得意だ。


そうしてパソコンの前まで進み
プリンターとデスクトップの間にある
丸まった紙の束を右手で掴むと

バンドスコアが沢山詰まった
メタル製のラックに
その筒ごと突っ込んだ。


別にアキに見られたって構わない。

――でも今はタイミングが早過ぎる。


「限りなくノープランだな」


自嘲気味にそう呟くと
濡れた髪をかったるくかきあげて
視線を横に移した。


アキが食い入るように見ていた
濃紺のエレキギター。


――アイツと同じ型のギター。


あれから一度だけ電話があっただけだけど
アイツは大丈夫だろうか。

電話口では気丈な声を上げていたけど
本当は全然平気なはずはないんだ。


心が重苦しくなって
強く唇を噛み締めた時

インターフォンを連打したような
けたたましいチャイムの音が聞こえきたから
深く短い息を吐いた後
仕方なく玄関に足を向けた。


――――――