『アキ?俺』


いつもの低い声よりもさらに低く響く
ハルトのぶっきらぼうな話し方。


「うん、ハルト
昨日は色々迷惑かけてゴメンね」

『いや別に。
で、具合はどうなの?』

「もうすっかり平気。
熱も多分下がったし
昨日ぐっすり眠ったから」

『そっか。
でも今日は練習ないからゆっくり休めよ。
本番まで日にちないんだから』

「うん、わかった」

『あと――
お前のギター俺預かってるから。
明日イベントのリハだろ?
その時直接持ってくから』

「え!そうなんだ。
私今起きたばっかで全然気付かなかった。
本当ゴメン」

『別にいいって
でさ――』


その時少し間があって
何か考え込むような気配がして


「ハルト?」

『――昨日の夜
あの男が言った事なんだけど、』

「えっ!?
ア、アイツと何か話したの?
私何も覚えてなくて」


っていうかハルト
ユウと直接会ったんだよね。
アイツ余計な事言ってないでしょうね?

しかもユウの事何か聞かれたら
どう言えばいいんだろう。


焦って携帯を握った掌が
汗でじんわりと滲むから
逆の手で持ち替えると

電話の向こうでハルトは
安心したような溜息をついた。


……??


『あぁ、覚えてないんなら何でもない。
で、アイツってさ――』

「う、うん」


何を聞かれるのか
ドキドキと心臓が鼓動をうつ。


『――やっぱいい。
今度会ったときに直接話す』

「ん?そう?」

『じゃあまた』