「あんたもバンドとか組んでるの?」

「まーな」

「ギタリスト?
もしかしてプロとかじゃないよね?」

「さあ、どうだろな?」


私の様子を探るみたいに
再び答えをぼかしたユウに
また腹が立って再度抗議しようとした時

――どこかで携帯が震える音。


「お前の携帯だぜ。
ほらっ」


その言葉と一緒に
すぐにダークブルーの携帯が飛んで来て
慌てて両手でキャッチして液晶を見る。


――ハルトからだ。

そうだ、彼にも凄く迷惑をかけた。


でも話の途中だし
出るのを一瞬躊躇すると


「何だよ出ろよ。
俺風呂行く」


とぶっきらぼうに言うと
エアコンのスイッチを入れて
部屋から出て行ってしまった。


すぐに涼しい風が流れ込んで
私の額の汗を掠め取る。

思えば部屋がありえないくらい蒸し暑くて
今までエアコンを付けてなかったのが
不思議なくらい。


もしかして私が寒いとか言ったから?


そう思ったら急に
ベッドで私を背後から抱きしめてた
アイツの身体が
汗をかいて凄く熱かったのを思い出して
訳もなく恥ずかしくなった。


あんな熱いの我慢してまで
何なのアイツ。


――あ〜もうヤダヤダ!


これ以上あいつの事を考えたら
自分がおかしくなるような、
そんな気分がして

ごまかすように
未だ振動を続けてる携帯の
通話ボタンを押す。


「もしもし?」