再び床に落っこちたユウはほっといて
やたらと大きいベッドから下りようと

勢いよく後ろを振り向いた途端
目の前に広がる光景に
身体が固まって動かなくなった。


……な、何これ。


白い壁に面した一角には

大きいスピーカーの付いたコンポ
ラックに敷き詰められた莫大な量のCD
可愛いデザインのマッキントッシュに
カラープリンター。


……これだけなら
別にどうって事ない風景だけど
その隣には――

かなり大きめのアンプ1台に
中くらいのアンプが2台
エフェクターが入ってるっぽい
黒のアタッシュケース2個。

そしてダークブラウンの
アコースティックギターと
濃紺のエレキギターが一台づつ

きちんと並んで
スタンドに立て掛けられていた。


「……もしかして」


あまりに驚きすぎて
ギターを凝視したまま
声にならない声を上げると

ユウはゆっくりと立ち上がって
ヘッドにへたり込んだ私を見下ろした。


「何?どうした?」


そんな言葉を投げかけながらも
ニヤニヤ嫌味な顔を見せるから
普通に気付く。

今私が考えてること丸解りのくせに
面白がってとぼけてるって。


「あんたも音楽やってるんじゃない」

「ああ、まあな」

「“まあな”って
何で何も言わないのよ!

私がバントでギター弾いてんの知ったら
普通“自分もやってる”
とか言うものなんじゃないの?」

「は?知らねーよ。
第一普通ってなんだよ?
そんなつまんねーもんに
俺を当てはめるな」

「……ヘリクツ」


うまく丸め込まれそうなのが悔しくて
ひそやかに悪態をつくと
ユウは気に入らないって風に
腕を組んで私を威圧的に見下ろした。


「別に一緒に住むからって
お前に俺の事
全部話さなきゃならねえって
義理はねえだろ」


ユウの言う事は最もだけど
何故だか悔しくて腹が立つ。

逆を言うなら隠す理由もないだろうに。