胃の中の物を全部外に出し切って
胃液しか出ないくらいになってやっと
嫌悪感が収まった。

それでも頭痛は酷くなる一方で。

水道で口を濯ぎながら
目の前にある鏡の中の自分を覗き見る。


生気を無くした青白い顔の
『偽物』の自分。


ケイと同じ色をした灰色の瞳が
感情のせいではなく只の生理現象で
涙を帯びて滲んでいた。


――あの記事を読んでも
何故か私は泣けなかった。

文章で知った事に
まだ実感が沸かないから?

泣いてしまったら
彼の死を認めることになるから?


どちらかは私にはわからないけど
二年前にケイと離れた時から
感情を表に出すのを
しないようにしてたから
涙腺機能が麻痺してるのかも。

だったら悲しみも何も感じないように
感情ごと壊れてくれればいいのに。


冷たい水で顔を洗ってから
急いで洗面所を出た。


――今の私とケイを繋ぐ場所は
ただ一つだけ。