ベッドに丸まったまま
クッションを力いっぱい抱きしめた。

頭が割れるように痛い。

――ぐにゃぐにゃと
視界に映るもの全てが歪んでいく。

必要以上に酸素を取り込もうとして
肩を大きくゆらし深く深く呼吸をした。


ケイ。

ケイ。

――ケイ。


彼に会いたくてたまらない。

いつもみたいに私の顔を覗き混んで
名前を呼び掛けて欲しい。

その温もりを直に感じていたい。


――行かなきゃ!

急にそう思い立って
勢いよく起き上がった。


今すぐケイに会いに行かないと。


ベッドから跳び起きて床に足をのばすと
フローリングの固さと冷たさを
足先に感じると同時に
頭に浮かんで来た事柄。


まだケイの死を信じたくない心が
やけに冷静さを持って働きかけて。

カナダに今すぐ行くって
パスポートは?
航空券は?
お金は?


感情だけではどうにもならない事実に
ただ愕然とする。

“現実”という名のものが
私の身体の動きを瞬時に停止させ
そのまま力なく床に崩れ落ちた。


私はただのちっぽけな15歳の子供で
自分で自由になる物なんか何もない。

保護者という肩書を持った大人に管理され
多くの事を制限されている。


ケイが死んだかもしれないのに
私は彼の妹なのに
同じ血が流れてるのに

今の私が彼に出来ることは
本当に何も……ない。


そんな風に思ったら、急に喉の奥から
苦みのある嫌な物が沸き上がってきて
口元を押さえながら
慌てて洗面所に駆け込んだ。