「またユウキの話?」

「アキは彼の歌生で聞いた事ないから
そんな冷めた反応しか出来ないのよ。
当日聞いたらびっくりするわよ!」

「んー別に余り興味ない」

「まったく!
あんな小さい場所で
彼らがプレイするなんて
きっと最後になるんだからね?

メジャーにいったら
絶対大人気になるだろうし」

「ふーん」

「ちょっと!
もっと興味持ちなさいよ!」


――実は日曜のライブは
ただのライブじゃない。


『Down Setインディーズラストライブ』
これがこの日のイベント名。


“Down Set”はこの辺りを拠点として
活動をするインディーズバンドで
インディーズ盤のCDは即売切れ
ライブのチケットは入手困難。

そんな超人気を誇る彼らが
ついにメジャーデビューを
果たすことになった。


都心から大分離れたこの場所で
そんなバンドが生まれるなんて
過去なかった事で

この辺で音楽をやってる人達にとったら
カリスマ的に崇められる存在。


それでメジャーデビューを前に
自分達のファンへの御礼と
各音楽関係者へのプロモーションを兼ねて
今までプレイしてた小さなライブハウスで
一夜限りのライブイベントが計画された。


同時に当日そこで
前座を務めるバンドが募集されて
大のDown Setファンのサクラの希望で
私達のバンドもオーディションに応募。

何故か運よく合格してしまって
このイベントの参加が決定した。


サクラの言った“ユウキ”は
Down Setのボーカリスト。

その歌唱力の高さと
ルックスの良さで
バンド一の人気者。

そして今のサクラの想い人らしい。


私はというと
彼らの音はCDで聴いてたものの
一度もライブに行ったことはなかった。

夜出かける言い訳をするのが
面倒だったし
第一彼らの音は
あまり好きではなかったから。