体育館からは微かに校歌の響きが届き
二人黙って耳を傾ける。


穏やかな午前の一時。


「アキ」

「ん?」

「お前高校どこ行くの?」

「そっか、もうそんな時期だね。
多分地元の公立にすると思う」

「……そっか」


ユウキとどうなったかとか
もちろん彼は聞いてこない。

多分この言葉だけで
解ったのかも知れない。

ハルトも驚くぐらいカンが鋭くて
周りの事よく見てるから。


そんな風に思ってる私の横で
ハルトがふと何か思い出したように
興奮気味で話始めた。


「でもさあの夜お前の歌聴いて
確かに驚いたけど
同時にかなり嬉しくもあったんだ
Deep Endの曲ライブで聴けてさ。

ケイが自殺したってニュース見た時には
もうこいつらのライブ見れないんだって
かなり落ち込んだけど
お前の歌でなんつーか救われた」

「……え!?
今の話……
ハルトDeep Endの事知ってんの?」


彼の口からDeep Endの名前出て来るとか
想像もしてなくて
上擦りまくった声で聞くと


「知ってるも何も
かなりのファンなんだけど。
あれ?お前には言ってなかったっけ?

てかさ、自殺とか
かなり裏切られた気持ちになったんだけど
お前の歌聴いてたら
その事実にかなり違和感感じてさ。

あんな歌うたうやつが
そう簡単に音楽捨てられっかなって。

きっとあれじゃねえの?
酔っ払って海飛び込んで溺れちまったとか
そんな類じゃねえ?
そういう突飛な事アイツしそうだもん」


実際はかなり毒吐いてるハルト
でも私嬉しくて視界が歪んでくるの
瞬き沢山してごまかした。


こんな身近なとこに
ケイのファンがいたとか
それも彼が自殺してないって
直感で感じてくれてる。


凄いねケイ。


わかってる人にはきっとわかってる
あなたの音楽を愛する気持ち。


それにその身体は無くなってしまったけど
こうやってケイの歌と魂は
ずっとファンの心の中で生き続けるんだね。


音楽って本当に凄い。