「ハルト」

「……変な事言ったら
俺お前と一生口効かないから」


相変わらずの態度に苦笑いしながらも
用意してたもう一つの言葉。


「じゃあ、ありがとう」


それに返事はなく
彼は眼鏡のフレームいじって
紙パックのお茶を飲んだ。


しばらくそのままで
やがてハルトが思い立ったように


「お前は別に気にする必要ないし。
逆に俺のほうが
言わなきゃいけない事ある。

この前のライブの後
確かに俺はクロスケージのメンバーと
飯食いに言ったけど
内心ではお前の事避けたんだから」

「ハルト……」


違うよ。
だって元の原因作ったの私だから。

みんなの心掻き回して
バンドをぐちゃぐちゃにした。

それなのに自分の事攻めてる彼に
胸が痛くなった。


「だからこの前は――」


この次の言葉とっさに予測した私は
遮るように言葉をぶつけた。


「――変な事言ったら一生ハルトと
口聞かないから!」


さっき言われた彼の言葉
そっくりそのまま返すと
ハルトは凄く嫌そうに顔しかめたから
思わず吹き出して笑う。


あの日の事
お互い謝り合うのはもうやめよう。

だってこれ以上
何か言ってもキリがないし。

この際自分の事も棚にあげるよ。


私はこうやって
ハルトと並んで座ってられる事が
嬉しくて堪らないんだ。


実はさっきだって
いつも一緒にサボってたこの場所に
変わらず来てくれたハルトの姿見て
溢れそうになる涙を必死で堪えたんだし。


それに合わせて
避けられてまだまだ接触すら出来てない
サクラとコウの事
絶対に諦めないって心に誓う。


ハルトがここにいる事実が
私にとてつもない勇気くれたから。