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9月、新学期。

久しぶりに袖を通した制服
まだ夏の気配が残る
蒸し暑い空気が佇む中

集会の為に体育館へ向かう
人波の逆方向に歩き
階段を駆け登った。


ガチャリと屋上への扉を開けると
少しだけ爽やかな風が吹き込み
ストレートに垂らした黒髪と
膝上のプリーツのスカートを揺らす。


真っすぐに空を見つめながら
歩みを進め、
フェンスに手を掛けると

やがて背後でガチャリと扉の開く音がして
それに導かれるまま
ゆっくりと後ろを振り返った。


そこにいたのは想像通りの人物。


彼は不機嫌そうに眼鏡の奥の瞳を細めて
私に向かって言葉を発した。


「アキ、お前相変わらず
制服似合わないな」

「ハルト、その言葉
そっくりそのままあんたに返すから」


学校指定の半袖の白いシャツ
崩したりしないできちんと着て
その場に佇むハルト
それにグレーと白のセーラー服姿の私

暫く微妙な顔で見つめ合って
それからどちらともなく笑い合った。


「ほら、さし入れ」

「ありがと」


空中に舞った
紙パックのコーヒーをキャッチして
コンクリートの上
ハルトと隣り合って座る。

間近で見た彼の顔
よく見たら口元に紫のアザ
それに頬には擦り傷があって


「え!ハルトその傷どうしたの?
ケンカとからしくないじゃん?」

「別にそんなんじゃないし」


そっけないハルトの返事聞きながら
ふと思い出した。


さっき廊下ですれ違ったコウの顔
ハルトと同じようにアザが所々あって
……てかむしろ
コウの方が重傷っぽかった。


詳しいいきさつはわからないけど
原因となった事柄の想像がついて
私から視線を反らすように空を見上げる
傷だらけの横顔に向かって声をかける。