なんで何も言ってないのに
全部わかってるんだろう。

車の中でぼやかした
あの家を出ようと思ってた事
それに彼と別れを決めた事
ユウキには何もかもお見通しだった。


流れ落ちる涙もそのままに
2本のギターをそっと胸に抱き寄せた。

こんなの残されたら
一生音楽止めることなんか
出来ないじゃない。

とか言っても辞めるつもりなんて
全然ないけど……。


ケイやマイク
それにユウキ
彼らが懸命に戦ってきた姿
ずっとそばで見てた証人。

この先を進む為の最高の援軍
手に入れた気分になって
しっかりと心に誓う。


とりあえず5分だけ泣いて
そしたら顔を洗ってあの家に帰ろう。


どんなに避けられても
怒られてもいいから
きちんと許可をもらって
あの家を出る。

逃げるのはもう嫌だから。

サクラやコウ、
それにハルトに電話して
もしも話してくれなかったら家に行って
きちんと事実を伝えて謝ろう。

まだ取り返しがきくって
そう信じてるから。


写真がなくてももう私は大丈夫。
ケイと過ごした日々は
しっかりとこの胸に刻まれてる。


そしてケイが手紙で書いてたこの言葉。

この胸の痛みや悲しみを乗り越えて
もっと力強い歌が歌えるように。

いつかこの気持ちも
笑ってチャラに出来るくらい――。