「アキ!
日曜のライブに着てく服きめた?」


ギターの準備が終わり
指ならしに弦を弾いていたら
サクラが目を輝かせながら近づいて来た。

指はそのままで
顔だけ彼女の方に向く。


「服?
まだ決めてないけど。
でも多分デニムにすると思う」

「えー!?
何でよ!!
せっかくだから二人で
超ミニにしない?」

「やだ!
サクラ、そんな恰好でステージ上がったら
スカートの中
客に見えると思うんだけど」

「それも計算のうちよ。
せっかく私達若くて可愛いんだから
最大限に利用しないと!

だって当日は音楽関係者も
たくさん来るっていうし
いつデビューのチャンスが
転がってくるかわからないわよ!」

「デビューって
私達まだそこまでのレベルじゃないから。
それに
そういうやり方は好きじゃない」


思わず手を止めて
壁の一点を睨み付けると
サクラは呆れたようにため息をついた。


「アキは本当潔癖だわね?
きっかけなんか何でもいいじゃない。
実力なんて後々ついてくるものでしょ?

私は絶対将来プロでやりたいし
今からコネ作っとくのも
悪くないじゃない」

「………」


……プロか。

ギターを弾くのは好きだけど
ハッキリ言って私は
そこまでの覚悟はまだない。

固まって黙り込んでしまった私を見て
サクラは片腕を腰にあてて
再びため息をついた。


「べつにいーわ。
無理強いはしたくないもの。

じゃあ私一人で当日
超かわいい恰好するけど
会場の視線独り占めしたらごめんね?

Down Setの視線、
ていうかユウキの視線ももちろんね?」


そう冗談っぽく言って
片目をつぶって微笑むから
それに返すように少し口の端を上げる。