震える足先を伸ばして部屋の中に進むと

昼間引越ししたはずのユウキの部屋
電気が付けたままになってて
その明るい光の下には丸っきり
朝見たのと同じ風景。


玄関にはゲタバコ
キッチンには冷蔵庫や食器
リビングにはソファーやテレビ
カーテンに観葉植物まで

全ての家具が残されたままになってて
驚きでグルリと視線を泳がせた。


何これ?
どういうこと?


そのまま寝室に飛び込めば
オレンジのライトの元
ベッドもコンポもCDも
全て残されたまま。


訳わからなくなりながら
開け放たれたクローゼットに
視線を向けた瞬間一気に涙腺が壊れた。


服とか小物
ユウキの日用品はモチロン無かったけど
ガランとした棚の前に
立て掛けられた2本のギター。

わざわざこんなとこに置くなんて
ユウキの荷物が無くてがっかりする私
まるで励ますみたいで

そこまで私の気持ち考えてくれた
ユウキの底無しの優しさに
更に大粒の涙流すはめになった。


2本のうちの一本はユウキの使ってた
Ibanezの濃紺のエレキギター。


私の使ってた物修理不可能なぐらいに
ボロボロに砕けてしまったの
ユウキには一言も教えてなかったのに。


もう1本の方は
Gibsonのナチュラルブラウンの
アコースティックギター。

何年ぶりかに再会した
マイクがいつか自慢げに抱えてたそれ。

まさかまた、
しかもこの場所でこのギター
見る事が出来るなんて。


曲作りするには確かにアコギのがいいし
私のこれからしたい事
お見通しみたいに
マイクがわざわざ送ってくれたの?。


偶然?それともユウキが
彼に何か言ったの?


そえして2本のギターの間には
4つ折に折り畳まれた紙が2枚
何気なく添えられてて
ドキドキしながら腕を伸ばした。


カサリと中を見ると
英語と日本語だし
紙質も字体も違う2枚の紙。

多分彼らからの手紙
ぼやける視界の中その文字を目で追った。