通話の切れた携帯を鞄にしまい
頬に残ってた涙の跡を拭いて
サンダルを履いた足しっかりと踏みしめて
ホームからの階段を降りた。


改札を通るために
鞄に閉まってた入場券取ろうとしたら


チャリ……

って同じポケットに入ってて
そんな金属音響かせたもの
それに気がついて目を大きく見開いた。


青いキーホルダーに付いたそれは
見間違える事なくユウキの部屋の鍵。


新幹線が行ってしまったホーム
思わず振り返って見た。


間違ってここに入った?
ううん、そんなはずない。

こんなのいつ入れたの?
この鞄今日初めてユウキの前で持ったのに。


焦ったように記憶をたどる。

ホームでの会話してた時は
そんなそぶりなかった。

そうなると
自販機の影に二人で入った時?

……うん、それ以外に有り得ない。


それに気が付いたら
もう我慢できなくなって
改札を通り
急いで駅を走り抜けた。


カンッ!カンッ!

ってアスファルトの上
サンダルの踵響かせ
ユウキのマンションへと走る。


左手に握った鍵が妙に熱く感じて
心臓が激しく鼓動を打った。


駅前にある彼の部屋にはすぐに到着して
乱れた呼吸を整えながら
ずっと握ってた鍵を使って
部屋のドアを開けた。


夜の闇に同化するような黒のドア。

その扉を引いた瞬間に
隙間から漏れた光に驚いて
ハッと息を飲む。


デジャブみたいに感じるこの景色――。