――目が覚めたら
隣にいると思ったユウキの姿が見えなくて
慌ててまわりを見回した。


まさか昨日の全部夢だったり、とか。


カーテンの隙間からは朝の光
脱ぎ捨てた服はベッドの下に散乱してて
昨日の夜のまま。


そっと隣の空間に触れると
彼が直前までいた温かい気配が残ってて
ホッと胸をなでおろす。


でもこんなことで
動揺してる自分が凄く嫌だった。


乱れた髪手ぐしで整えながら
身体を起こすと
部屋の外から人の声が聞こえて

薄手のタオルケット
身体に巻きつかせながら
ベッドからそっと降りた。


ドアの間少しだけ空いてて
その隙間から会話が聞こえる。


誰?

ケンとかだったらどうしよう。
絶対この状況
からかわれるにきまってるし。


その人物の正体だけでも確かめようと
ドアノブに手をかけた時


「全く昨日は打ち上げも出ないで
どこ行ったのよ。
紹介しなきゃいけない人
いっぱいいたのに連絡はつかないし」

「別にいいだろ?
俺がいなくてもうちには
超優秀なマネージャーいるんだから」


この声上野さん?


……うん間違いない。
このキツメの抑揚のない話し方は
Down Setのマネージャーの女の人の声だ。


私がこんなとこにいるのばれたら
絶対ダメな気がして
慌てて引き返そうとすると


「それと昨日の件は
全部こちらで処理したから」


え?……昨日の件?


ベッドの方に向かってた足思わずとまり
物音を立てないようにドアの側
ピッタリと身体を寄せた。

すると私の心を代弁したように
ユウキの鋭い声が届く。


「何だよそれ」

「だから昨日のライブであなたが勝手に
女の子ステージに上げた件よ。

あの事を載せようとしてた雑誌社の記事は
全部うちが買い取ったから。
それと彼女は表向き
うちの新人って事になってるわ」

「それじゃあアイツと契約――」

「――それはないわ」

「は!?どうしてだよ?
あんなに歌える奴なんか
そうそういないだろうが!」