溢れてくる涙を軽く手で拭って
後ろを振り返って少しだけ笑う。


「本当凄い
モントリオールの景色思い出したよ。
吸い込まれそうなぐらいの
あの深い雪の景色」


するとユウキは眩しそうに
少し目を細めて


「そっか……俺モントリオール
まだ行った事ないんだよな。
ケイと会うのは
ロスとかNYばっかだったし」

「ヘぇ、そう言えばケイ
長い休みになると
フラリと二、三日どっか行って
帰ってこないことあったかも。
あれってユウキに会いに行ってたんだ」

「マジでアイツ俺の事全然話してねーのな。
ここまでくると悪意すら感じるよ
……あの野郎」


おもいっきり悪態をつく彼がおかしくて
クスクスと笑うと


「きっと今だって俺がアキに近づかねーか
睨み効かせて見てるはずだよ」

「えっ!そうかな?」

「絶対だよ。
ほら今波が少し高くなった」

「気のせいじゃない?」

「イヤ、多分その辺にいる」


そう言って
海面を真っすぐに見つめたユウキは
少し声のトーンを落とし


「――だから、お前が見てるこの場所で
アキに伝えたいこと
あるんだけどいーか?」


急に真面目な顔になったユウキ
足元ではその返事みたいに
静かに波が揺れた気がした。


ユウキは真っすぐに私を見つめながら


「アキ、もうわかってると思うけど
お前の事が好きだ。

ケイの変わりには
到底ならねーかもしれないけど
お前の事これからもずっと
守っていきたいって思う」


心臓がドクンとなって
途端に激しく鼓動を鳴らす。


月の光を浴びたユウキの瞳
その真剣な眼差しに目が反らせなくて

緩やかな風が私の黒髪を
闇の中静かに揺らめかせた。


「それに家族を全員無くして
お前が寂しいってんなら
来年お前が16んなったら
俺がお前の新しい家族になってやるから」

「えっ!?
それって……」