こんなの普通じゃ考えられないけど
真夏の海に浮かぶ白い花が
冬のモントリオールの街を覆う
雪の白さと被って見えて

熱い眼差しで海を見続けていたら
ユウキは砂音を立てながら
私の隣に立った。


「この前はあいつを供らう意味で白い花
海に浮かべたけど
今夜はそうじゃなくて、

お前らが過ごしたあの街の雪の風景
また二人に見せてやりたかったんだ」

「ユウキ……」


驚いて顔を向けた私に
ユウキは無言で笑顔を返す。

そしてまた視線は海面の花へ。


彼の意図そこでやっとわかって
もうどうしようもない気持ちになった。


更にユウキの低い声が
海水に振動するように伝わる。


「俺の勝手なイメージだけど
モントリオールは雪の街だろ。

そしてあの歌の歌詞の通りなら
死んだアイツの魂は
お前の事守る為に
海に溶けてここまで流れ着いてる。

だからお前らが供に過ごした
この雪の世界で
果たされなかった約束を
俺が叶えてやりたかったんだ」


「子供騙しだよな……」なんて言って
顔をしかめる彼の言葉
首を夢中で横に振って否定する。


瞳から溢れた涙
雫となって宙を舞った。


靴とか服濡れるのも気にしないで
引き寄せられるように
足を海の中に沈めながら


「ありがとう。
凄い……綺麗。
あの街の雪と同じぐらい」


膝まで浸かった海水
この前と違って暖かくて
まるでケイに抱きしめられてるみたいで
更に涙があふれた。


うん、きっとケイはここにいるよ。

子供だましでも何でもいい。

果たせなかった再会する約束を
遠く離れた夏の海の中で。


この海の暖かさと
闇の中で白く光る海面
そして月と星の瞬く夜空。

この風景とこの温もり
それに今のこの気持ちを
――私はきっと一生忘れない。