「あの前の晩マイクからケイの話聞いて
本当はすぐにでも
モントリオールに行きたかったけど
仕事があって無理で
あとお前の事とか心配で色々……
ここ寝転んで考えてたんだよ。

だからお前が海の中にいるの
全然気付かなかった」

「じゃああの花
わざと流したんじゃなかったんだ。
あの時ね、私あの花に助けられたんだ。
あれ見て現実に連れ戻された」

「は!?それマジで?」

「うん、マジで」


驚いて私の顔を振り返って見るユウキに
頷きながら笑顔を返す。


「そっか、
あの花がまさかそんな事に役立つとはな」

「それじゃあ今夜はどうしたの?
しかもこの花の量
こんな夜によく手に入ったね」

「24時間営業のスーパー内にある花屋
わざわざ行って買ってきたんだよ。
棚にある白い花全部くれって。

この前と同じ店員で
かなり怪しい者扱いされたし」

「ふふっ、
でも何で白い花ばっかり?」


何気なくそう聞いてみたら
ユウキは何か企んだように口元を上げた後
勢いよく立ち上がった。


「アキ、お前もちょっと手伝え」

「……え?」


――それから二人
大量の白い花を海の中に流していく。


波の力を借りながら
岸から沖へ
段々と揺れ進む花達。

月の微かな明かりを反射するように
キラキラと光る海面
そしてそこを一面覆いつくす
白い花の絨毯を見つめていたら

遥か昔の懐かしい景色思い出して
思わず足を一歩前に踏み出した。


「雪……だ」